ネクストモード代表が語る、全社リモートワーク企業のモチベーション&エンゲージメント向上方法 #devio_showcase

ネクストモード代表が語る、全社リモートワーク企業のモチベーション&エンゲージメント向上方法 #devio_showcase

ネクストモードの里見宗律代表取締役社長による「ネクストモードのEmployee Experience」と題された講演が行われました。完全リモートワークを行いながら最高の従業員体験が得られることを目指し、クラウドを活用した新しい働き方を企業に提供する同社のEmployee Experienceに関する取り組みをご紹介します。
Clock Icon2020.11.25

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個々の能力は高いが生産性が低い--。日本の労働や生産性について語る際によく出る言葉です。かねてから課題になっていたのに加え、近年は2025年の崖レポートや新型コロナウィルス感染症の影響も合わさって具体的な危機感を持って語られるようになりました。

解決のキーワードとしてあげられるクラウド技術の活用やリモートワークですが、環境面や人事制度面など、何をどのように整えればスタート出来るのかピンと来ない企業も少なくないでしょう。

クラスメソッドのオンラインイベント「Developers.IO Showcase」にて合弁会社・ネクストモードの里見宗律代表取締役社長による「ネクストモードのEmployee Experience」と題された講演が行われました。完全リモートワークを行いながら最高の従業員体験が得られることを目指し、クラウドを活用した新しい働き方を企業に提供する同社のEmployee Experienceに関する取り組みをご紹介します。

なお、ネクストモードおよびクラスメソッドの技術支援に関するご相談がございましたら下記のフォームにてご入力ください。

クラスメソッドに相談する

クラウドで新しい働き方を提供する

ネクストモード株式会社は「クラウドであたらしいしい働き方を」をミッションとして、クラスメソッドとNTTグループ東日本株式会社との共同出資で2020年7月に設立されました。

里見氏は20年ほどNTTグループで技術職寄りの業務を行っており、2014年から社内でAWS導入に携わるようになります。その後、外部企業に対してAWSのノウハウを提供開始するようになっていました。

エンジニアエクスペリエンスに関して尖ったサービスや価値の提供を行うクラスメソッド・コンシューマーエクスペリエンスを考えてきたNTT東日本に対し、従業員の働き方をクラウドで変えていきたいと考えているのがネクストモード。クラウドの活用で従業員の生産性を上げていこうとしています。

なぜ日本の労働生産性は低いのか

まず里見氏は、日本の生産性が高く無いことについて振り返ります。2018年のOECD加盟36カ国中、日本の労働生産性は21位であるというグラフを示しました。

加えて、従業員の企業に対する信頼度の数値が調査139カ国中132位と非常に低いことも紹介。「働くことが喜びにつながっていないのではないか、自発的に会社に貢献するようなメンバーが少ないのではないか」と語りました。このエンゲージの低さは、周囲に不満を撒き散らす社員が出てくるなどの悪影響を及ぼします。

その反面、日本人の読解力や数的思考力・IT・スキルのような能力指標の調査・PIAACでは高い評価を受けています。

「ポテンシャル・能力があるのにやる気が少ない。なのにロイヤルティ・やる気が無い。他の人に自社を紹介して入ってもらおうとするような人が少ない」と分析する里見氏は、PIAACの高いメンバーが不満を撒き散らしたり生産性を下げるリスクを考えるようになりました。負のスパイラルが発生してしまうのです。

では、自発的な貢献度を上げるにはどのようなことをしたら良いのでしょうか。

オープンな組織を作ることがポイントと考えた里見氏は「社員がやる気になって情熱を持って仕事に取り組める環境作りが生産性の向上につながるのではないか。肩書や役職にこだわらず実力主義で課題に対してオープンに話し合える環境がカギではないか」とボトムアップ型組織の利点を語りました。

エンゲージメントとモチベーションを上げる

具体的に、どのように社員のモチベーションを上げていくのでしょうか?

全社員がテレワークで働くネクストモード。

「全社員がテレワークで働いているため、労働が家庭に入り込むことが課題になることは会社設立前から懸念していました。本来リラックスするはずの家庭に仕事でネガティブな感情を与えてしまうのではないか」

との予測がありました。そこで、スタッフがリモートワーク時にリラックスできるようにするためにはどのようにしたら良いかを考えるようになり、求める人物像やルールを規定しました。

まず、ネクストモードが求める人物像として以下の通り規定しています。

・オープンであること ・楽しく働くこと ひらめき、情熱、意欲、興奮を大切に ・フラットな人間関係(パートナーシップ)を保つこと ・全員がリーダーシップを持ち続けること ・謙虚であること 感謝の気持ちを持ち続けること ・前向きであること ・いいところを凝視することで、人・組織を貶さないこと ・フィードフォワード 早く失敗して、次に活かしていくこと ・テクノロジー好きであること

本講演では、この中の「オープンであること」についてフォーカスを当てました。

オープンであるための企業文化

同社では、オープンであることを求めるために、カルチャーを言語化し規定しています。 代表的なものとして以下の3つを紹介しました。

・メンバーを役職で呼ばない

・ノウハウを抱え込まずWikiで社内で広めていったり、Developers.IOに執筆するなどしていく

・Proflly(クラスメソッドが開発中のコミュニケーションハブサービス)やSlackなどの社内SNSで自分のキャラクターをさらけ出していく

オープンなチャンネルで話すことで

「いろいろな話をしているのを私も見ているので、トラブルがあったときなどにもすぐ助けることができますし、マイクロマネジメントをしなくても良い、報告のための資料を作らなくても良い、というメリットがあります」

と効果を語ります。アイディアの発信や雑談もしやすくするとともに『誰もがマイノリティ』という意識の元、個々の志向や性別・国籍を尊重し、力を持たない・数の少ない立場からも物事を考えられるようにしたいと続けました。

アイディアはどんどん発信

また、アイディアの採用についてもフラットに考えるように工夫をしています。

「どの役職の誰が言ったから、とアイディアを採用するのではなく、アイディアの中身の良いものをフラットに、オープンに採用しています」

オープンな発言は取り入れられてこそ効果を発揮します。

マネージャーの役割

マネージャー側には、何よりメンバーへの貢献と献身が大切、と説明しています。

「何か仕事を振る、何か自分の思い通りにチームメンバーを動かす権利がある、のではなく、メンバーの情熱を育てる環境づくりをしていくのが役割です。一人ひとりの社員の強みを伸ばしていかなければなりません」

環境作りのポイントにしているのは、可能な限り意志決定のプロセスに参加してもらうことです。

「意思決定のプロセスにできるだけメンバーに参加してもらう。旅費をどのように出すといった細かなところまでも、幹部が一方的に決めて従わせるのではなく、全員で意思決定のプロセスを踏んでいこうじゃないか、とお願いをしています」

そのためには、できるだけ権限をチームメンバーに移譲して、一人ひとりに仕事のオーナーシップ・リーダーシップを持ってもらうように。そうすれば必然的に生産性が上がるでしょう。

「『会社はこちらの方向に向かうんですよ』という理念や戦略を説明することで、みんなが同じ方向を向いて働けるでしょう、とマネージャーにお願いをしています」

情報をオープンにしメンバーにも意思決定に参加してもらう。この環境作りこそ同社のマネージャーの役割となります。

全体をぼんやりと確認する組織の透明性

オープンであるために組織の透明性が重要です、と語る里見氏。

透明性に関して、遠くと近くの目標をぼんやり見る、という観点から説明を進めました。

予備自衛官(普段は社会人や学生といった生活に従事しながら、自衛官として必要とされる練度を維持するために訓練に応じ、防衛時・災害時には招集に応じる予備役制度やその対象人員。 https://www.mod.go.jp/gsdf/reserve/ )で操作経験のあるライフル射撃に目標設定を例えました。

ライフル射撃では、重心軸の延長線上に目標を見定めます。的に対して狙いを定める際に、照門(目前の目標)と照星(少し先の目標)と的(遠くの目標)を一直線上に並べて狙うことが大切になります。

しかし、人間の目の焦点は1点にしか合いません。照門・照星・的のどこかをはっきり見ようとすると位置関係を見誤りやすくなります。それよりも、3つのポイントをぼんやりと見えるような状態の方が命中精度が高くなります。

「初心者ほど的や照星、照門などどれか一つを見てしまい、3つを同時にみることができません。照門と照星が0.1ミリずれるだけで的では6センチもずれるケースもあるのです」 ライフルでの狙いの定め方の問題を説明し、

「全体をぼんやりして見るのが最適な『みいだし』。そのためにはリラックスした状態でないと難しいものです。つまり、遠くの目標、近くの目標、目前の目標を同時にぼんやりとみいだせることが大切です」

と、まとめました。遠くの目標と目前の目標を同時に見なければ、正確な狙いを定められない。そのためには情報の非対称性をなくす仕組みが必要ではないかと考えています。

企業活動においては、目前の目標から遠くの目標までをメンバーが認識出来なければ、全体をぼんやりと確認することも出来ません。

ネクストモードでは遠くの目標(クラウドで新しい働き方を提供することで日本の生産性を上げる)を掲げていますが、目の前のお客様の困りごとを解決したりクラウドのスキルを身につけるといった目前の目標ばかり見ていると、遠くの目標が見えなくなってしまいます。

「ですから、目前・少し先・遠くの目標をきっちり伝え、会社の透明性を確保することが、目前の仕事をする際の社員のモチベーション・エンゲージメントに繋がってくると考えています」

目標をはっきり伝えることと会社の透明性について、里見氏はこのようにまとめました。

なぜ組織に透明性が必要か

里見氏は別の観点から透明性について説明します。

遠くの目標から目前の目標までをぼんやり見るためには、組織の透明性が必要不可欠と考えるネクストモード。

透明性がなければ、メンバーは同僚や上司に助けを求められません。自分が躓いたときの道しるべが見えなくなってしまいます。

「以前はリーダーシップによって育てるということもありましたが、技術が進歩する時代においてはリーダーが全てを知っているというのは難しい。私が全てのAWSの機能を語るのは無理で、若いエンジニアの方が優秀なのです。個々のエンジニアが各ビジネスシーンで判断する方が、最終的にはスピード感に繋がるのではないかと考えています」

個々のメンバーが判断し、それが全社で機能するためには事前に共通の認識を持っていることが必要となります。透明性はスピーディーに仕事をするためのベースになるのです。

里見氏は人事情報など機微なものを除いて情報を公開した方がトラブルが減ると考えています。

「それぞれがパズルの1ピースを抱えるのではなく、できるだけお互いのピースを共有することが重要です」

SaaSをフル活用して業務に当たる

組織の透明化に向けて、具体的にはどのように運営していくのでしょうか。実際、同社ではどのようなクラウド、どのようなツールを使っているのでしょうか。

オフィスを持たず完全テレワーク・ワーケーションも推奨している同社では、社内ツールはすべてSaaSを組み合わせています。

非効率な働き方の例として ・部下による管理職のスケジュール調整 ・電話の取り次ぎ ・下位の役職者による会議の議事録作成

を挙げ、それぞれ ・G Suiteを活用した日程調整アプリ「アイテマス」 ・Amazon ConnectとSlackを組み合わせた着信通知機能 ・G Suiteのドキュメント共同編集機能 を使うことで全体の効率化の仕組みを構築しています。全員がフラットに働け、全員が公平であることがポイントとなっています。

また、Slackでは540のカスタムスタンプを登録し、スタッフが自由にカジュアルに感情表現できるようにしています。

「喜びや悲しみといった感情を共有することで、カジュアルに感情を表現するシンパシーの場が必要です。非エンジニアも含めた全社員がカスタムスタンプを自由に登録してくれています」

その効果はポジティブな感情表現として表れています。ある受注報告に対して68件の返信があったこともありました。

シャドーITに気をつける

「SaaSを使うことで働き方を変えることができるはずですが、まだまだ、特に大企業ではSaaSの利用を許されていないところがあるのではないかと思います。オンプレミスや使いにくいシステムを使い続けていることで、働き方の自由を獲得したい社員が辞めていってしまうということもあるのではないでしょうか」

とEmployee Experienceに感する危機感を募らせます。

反面、シャドーIT(スタッフが管理者に無断で外部サービスを利用している状態)が加速している現実もあります。ある省庁や大企業では、約1割の社員がフリープランのSlackを使っていました。関連企業や取引先でメールを使わず、Slackが業務で必要になるようなケースも少なくないのです。

大手企業にもSaaSを導入

大企業にオープンなSaaSを導入した事例として、NTT東日本の事例を紹介しました。

Active Directoryのような認証基盤を活用ながらSlackやG Suiteを始め、課題管理のasanaや会議議事のSmartMeeting、社内WikiとしてNotionほか様々なSaaSを導入。

セキュリティを確保しつつSaaSの利便性・運用の優秀性を提供しています。

「こうした便利なツールの活用で、社員の自発的な貢献度やエンゲージメントを高めていけるのではないかと思っています」

最終的には日本の生産性をクラウドによって高めていきたい、という里見氏は

「SaaSの導入支援を行っていますので、我々が使っているSaaSのノウハウだけでなく既存業務のコンサルティングやヘルプデスクまで提供できます」

と、これからSaaSの導入を検討している企業に対してメッセージを送り、講演を終えました。

Q&A

講演中に視聴者から送られた質問は以下の通りです。

--Slackでの雑談はどのような内容が盛り上がりますか?

お昼ご飯何食べた?や飲み会の動画など、食べ物系は盛り上がります。個人のマニアックな趣味を出す人がいて、個別に盛り上がるケースもあって、それは面白いと思いました。

--ネクストモードでは中途採用を行っていますか?求めるものは?

社員という形では募集していませんが、色々な契約の仕方はあるので優秀な方には是非応募していただきたいなと思います。AWSのスキルなど以上に、我々のカルチャーと合っているかを大事にしたいと思っています。本日の講演を聞いて「自分が働きたいスタイルにあってる!」と思う方にご応募いただければと思います。

--支配したい経営者の心はなかなか動かないように思います。心理的なアプローチをどのように進めていますか?

直接の回答になっているかわかりませんが、SaaSの支援の際に、最初にカルチャーの話を必ずするようにしています。ツールとしてSlackを入れたいだけのお客様は「なぜカルチャーの話になるんだ」となりますが、入れることによってカルチャーを変えていきませんか?ネクストモードではこのようにしていますよ、ということをお話ししています。経営者の心理を変えるのはおこがましいものの、こうしたらより楽しくなるということをお伝えしたいと考えています。

--オフラインで社員と会うことがなさそうですが、疎外感がないように工夫していることは?

まさに私たちは全員テレワークです。会う機会が少なく、私も全ての社員とリアルで会っているわけではありません。リモート飲みが流行ったこともありますがなんとなく味気ない気がしています。雑談チャネルやリモートでの1on1を大事にして新しいコミュニケーションの形を模索しているところです。

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